毎年暑い季節になると、激しい暑気で体調を崩し、頭痛、吐き気、けいれんなど、いわゆる熱中症と思われる症状で病院に搬送される人が急増し、最悪死に至るケースもあります。

熱中症という言葉や症状は徐々に認知されるようになり、涼しい場所で過ごす、水分を十分に補給するなどの対策はよく知られているにもかかわらず、意外な原因で熱中症になってしまう人も多くいるようです。

8月2日放送の健康カプセル ゲンキの時間では、熱中症対策マニュアル2015と題し、実際のケースに照らして意外な落とし穴となっている熱中症の原因を探りました。

解説は、熱中症対策の権威としても注目される昭和大学病院の三宅康史先生です。


  
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ケース1 自動車で移動中の営業マンの場合

エアコンの利いた自動車での移動、十分な水分補給(冷茶500ミリリットル)と、特に問題のなさそうな状況だったにもかかわらず、車を降りてオフィスに入った途端、ひどい頭痛をおぼえた男性。

アウトドアが好きで、ある程度の知識があったため、「あ、これは熱中症だ」とすぐに自覚する同時に、身に覚えがなく、困惑したようです。

三宅先生によると、原因は睡眠不足と水分不足だとか。

まず、睡眠不足は自律神経を乱れさせるため、体温調節機能が低下してしまいます。

水分不足というのは、そのものずばり「量が不十分である」ということ。

のどや体の渇きを自覚する前に、こまめに補給すること、その総量もできれば2リットル程度になるのが好ましいでしょう。
(ただし、既往症などで医師から水分を制限されている場合は、それに従いましょう)

ケース2 ゴルフのキャディーさんの場合

ゴルフ場でキャディーを務める40代の女性の場合、仕事の性質上、熱中症対策への意識は高く、水やスポーツドリンクを2リットルほど補給する、服装に気をつかう、睡眠時間も6~7時間と、ケース1の原因も解決されています。

実はこの女性は熱中症の症状が出る前日にも、足の「つり」など、熱けいれんと思われる症状が既に出ていました。

原因として考えられるのは、「ナトリウム(塩分)不足」です。

昼食をゼリー飲料で済ませることもあったとのこと。

水分だけで塩分の補給がおろそかになって起こる熱中症の症状についても、知識・情報としては知られてきていますが、塩分をきちんととるためには、しっかり3度の食事を摂ることが肝要です。

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ケース3 剣道の御稽古中に

ある60代の男性は、食事・睡眠時間・水分、どこをとっても文句をつけようのない整い方でしたが、趣味である剣道の稽古中に症状を訴えました。

この男性の場合、もともと高血圧の症状があり、医者から処方された薬を飲んでいたことと、「しっかりした防具で覆われ、室内で行う」剣道という競技の性質そのものが熱中症の原因になっていたようです。

複数処方されていた薬には利尿作用のあるものもあり、その作用でどうしても水分不足に陥りがちというのもあったようです。

もし何らかの疾患があったり、特定の処方薬を飲んだりしている人の場合は、熱中症の観点から気になることや気を付けるべきことを主治医に相談してみましょう。

ほかにも、室温を下げるためのマストアイテムであるエアコンですが、エアコンの利いた空調のよい部屋で長時間過ごすことで、肌の乾燥が乾燥して困った――なんてトラブルに悩む方も多いのでは?

実はこれも熱中症対策的には黄色信号です。

不感蒸泄(ふかんじょうせつ)といい、発汗以外の理由で体から水分が失われることがあります。

1日分なら、皮膚から600CC、呼気から300CC失われるといいますから、なかなかバカにできない量です。エアコンの利いた部屋で快適に過ごすためにも、水分の補給は欠かせません。

エアコンといえば、涼しいところから暑い場所への移動やその逆などが原因となる「温度差疲労」も自律神経を乱れさせる原因になり、熱中症の症状が出る可能性がありますので、御注意を。

4割は住宅内で起こる?

しばしばニュースとして報道される熱中症の例は、炎天下でのスポーツ競技など、屋外でのイメージが強くはないでしょうか。

でも実際は、ある統計によると、ごく普通の住宅内で熱中症になり搬送される例が全体の4割とのことです。

大抵の人にとってゆったりとくつろげる自宅ではありますが、それゆえに、ついついお酒を飲んでしまったり(アルコールによる利尿作用)、夏以外の季節は快適な部屋の南側にベッドを置いてしまったり(気温上昇)と、無意識に熱中症の原因を作っている場合があります。

ほかにも、カーテンは素材によっては蓄熱性が高く、就寝時にカーテンを引くことで室温を上げる可能性もあります。

エアコンやよしず、すだれなどをうまく利用し、室温をコントロールできるようにしましょう。

特に高層住宅の場合、上階に行くほど気温が上がります。

また2階建て以上の一戸建てにお住まいの方は、できるだけ寝室は1階にしましょう。

【参考】熱中症対策にオススメの食べ物・飲み物

熱中症対策
出典:http://conexions.org

最近では暑さ対策を意識した塩味のキャンディでもおいしいものが出回っていますが、昔ながらのごく普通の食べ物を食生活にうまく取り入れてみましょう。

飲み物なら牛乳、ミネラル入りの麦茶などがおすすめです。

また、梅干し、キュウリの一本付など、「おばあちゃんのお茶請け」的な食べ物もおすすめ。

体の熱を取り、塩分の補給もできるところてんを、お風呂上りのアイスやジュースの代わりに食べるのもオツなものです。

まとめ

体感温度を下げるため、ハッカ(ミント)油の清涼感を利用する方法も最近人気があります。

重曹と一緒に水に溶いてスプレーしたり、汗を拭きとったり、おしぼりを作って首元にまいたりと方法はいろいろですが、虫よけの作用もあり、話題のようですね。

ただ、少し注意したいことがあります。

この方法だと、暑さをある種の「錯覚」でやり過ごしてしまい、熱中症対策に当たるものがおろそかになってしまうのだといいます。

また、これは個人的な経験ですが、ミントの香りには食欲を落とす作用もあるため、洗濯や掃除にハッカ油を使った結果、部屋にミントの香りが充満し、食べる量が控えめになってしまうことがあります。

熱中症まで至ったことはありませんが、ちょっとまずいかな?と思いました。